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宮崎地方裁判所都城支部 平成元年(ワ)173号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金五四四万円並びに

(一) 内金九八万円に対する昭和五七年四月一〇日から同年五月九日まで年一割八分、同月一〇日から支払ずみまで年三割六分の各割合による金員

(二) 内金九九万円に対する昭和五七年四月一二日から同年五月一一日まで年一割八分、同月一二日から支払ずみまで年三割六分の各割合による金員

(三) 内金九七万円に対する昭和五七年四月一四日から同年五月一三日まで年一割八分、同月一四日から支払ずみまで年三割六分の各割合による金員

(四) 内金九五万円に対する昭和五七年四月一六日から同年五月一五日まで年一割八分、同月一六日から支払ずみまで年三割六分の各割合による金員

(五) 内金五五万円に対する昭和五七年四月一七日から同年五月一六日まで年一割八分、同月一七日から支払ずみまで年三割六分の各割合による金員

(六) 内金六〇万円に対する昭和五七年四月二二日から同年五月二一日まで年一割八分、同月二二日から支払ずみまで年三割六分の各割合による金員

(七) 内金四〇万円に対する昭和五七年四月二三日から同年五月二二日まで年一割八分、同月二三日から支払ずみまで年三割六分の各割合による金員

を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  1項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、被告に対し、

(一) 昭和五七年四月一〇日、九八万円を弁済期同年五月九日、利息及び損害金日歩一〇銭の約定で、

(二) 同年四月一二日、九九万円を弁済期同年五月一一日、利息及び損害金日歩一〇銭の約定で、

(三) 同年四月一四日、九七万円を弁済期同年五月一三日、利息及び損害金日歩一〇銭の約定で、

それぞれ貸し渡した。

2  原告は、昭和五七年三月一五日、被告から手形割引により買い受けた別紙手形目録(一)記載の約束手形(以下「(一)手形」という)について、

(一) 昭和五七年四月一六日、(一)手形の手形金一五〇万円の内金九五万円を、弁済期同年五月一五日、利息及び損害金日歩一〇銭の約定で、

(二) 同年四月一七日、右手形金の残額五五万円を、弁済期同年五月一六日、利息及び損害金日歩一〇銭の約定で、

それぞれ原・被告間の消費貸借の目的とすることを合意した。

3  原告は、昭和五七年三月二〇日、被告から手形割引により買い受けた別紙手形目録(二)記載の約束手形(以下「(二)手形」という)について、

(一) 昭和五七年四月二二日、(二)手形の手形金一〇〇万円の内金六〇万円を、弁済期同年五月二一日、利息及び損害金日歩一〇銭の約定で、

(二) 同年四月二三日、右手形金の残額四〇万円を、弁済期同年五月二二日、利息及び損害金日歩一〇銭の約定で、

それぞれ原・被告間の消費貸借の目的とすることを合意した。

4  よって、原告は被告に対し、

(一) 貸金九八万円並びにこれに対する貸付日である昭和五七年四月一〇日から弁済期である同年五月九日まで利息制限法所定の制限内の年一割八分の割合による利息及び弁済期の翌日である同月一〇日から支払ずみまで利息制限法所定の制限内の年三割六分の割合による遅延損害金

(二) 貸金九九万円並びにこれに対する貸付日である昭和五七年四月一二日から弁済期である同年五月一一日まで利息制限法所定の制限内の年一割八分の割合による利息及び弁済期の翌日である同月一二日から支払ずみまで利息制限法所定の制限内の年三割六分の割合による遅延損害金

(三) 貸金九七万円並びにこれに対する貸付日である昭和五七年四月一四日から弁済期である同年五月一三日まで利息制限法所定の制限内の年一割八分の割合による利息及び弁済期の翌日である同月一四日から支払ずみまで利息制限法所定の制限内の年三割六分の割合による遅延損害金

(四) 準消費貸借金九五万円並びにこれに対する準消費貸借日である昭和五七年四月一六日から弁済期である同年五月一五日まで利息制限法所定の制限内の年一割八分の割合による利息及び弁済期の翌日である同月一六日から支払ずみまで利息制限法所定の制限内の年三割六分の割合による遅延損害金

(五) 準消費貸借金五五万円並びにこれに対する準消費貸借日である昭和五七年四月一七日から弁済期である同年五月一六日まで利息制限法所定の制限内の年一割八分の割合による利息及び弁済期の翌日である同月一七日から支払ずみまで利息制限法所定の制限内の年三割六分の割合による遅延損害金

(六) 準消費貸借金六〇万円並びにこれに対する準消費貸借日である昭和五七年四月二二日から弁済期である同年五月二一日まで利息制限法所定の制限内の年一割八分の割合による利息及び弁済期の翌日である同月二二日から支払ずみまで利息制限法所定の制限内の年三割六分の割合による遅延損害金

(七) 準消費貸借金四〇万円並びにこれに対する準消費貸借日である昭和五七年四月二三日から弁済期である同年五月二二日まで利息制限法所定の制限内の年一割八分の割合による利息及び弁済期の翌日である同月二三日から支払ずみまで利息制限法所定の制限内の年三割六分の割合による遅延損害金

の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

すべて否認する。

三  抗弁

1(一)  被告は、昭和五五年四月二六日、有限会社都城食品蒟蒻製造所(以下「都城食品」という)振出にかかる支払期日同年五月二五日、金額一五〇万円の約束手形を利息月六分の約定で割引を受ける方法により、原告から一五〇万円を借り受け、その際利息九万円を天引きされた。以後、被告は原告に対し、右貸金一五〇万円について、別紙計算書1記載の振出日、支払期日、金額のとおりの切替えの約束手形(いずれも都城食品振出)を差し入れ、その都度、月六分の割合による利息を天引きされた。

右天引きされた利息の合計は、別紙計算書1記載のとおり二一〇万七〇〇〇円となり、利息制限法所定の制限内利息は四〇万四五三六円であるから、一七〇万二四六四円が過払いとなり、被告は原告に対し、同額の不当利得金返還請求債権を有する。

被告は、平成四年四月一三日の本件口頭弁論期日において、原告に対し、右不当利得金返還請求債権をもって、請求原因2の(一)、(二)の準消費貸借金債務と対当額で相殺する旨の意思表示をした。

(二)  被告は、昭和五五年四月二六日、都城食品振出にかかる支払期日同年五月三〇日、金額一〇〇万円の約束手形を利息月六分の約定で割引を受ける方法により、原告から一〇〇万円を借り受け、その際利息七万円を天引きされた。以後、被告は原告に対し、右貸金一〇〇万円について、別紙計算書2記載の振出日、支払期日、金額のとおり切替えの約束手形(いずれも都城食品振出)を差し入れ、その都度、月六分の割合による利息を天引きされた。

右天引きされた利息の合計は、別紙計算書2記載のとおり一四四万二五〇〇円となり、利息制限法所定の制限内利息は二七万六三六七円であるから、一一六万六一三三円が過払いとなり、被告は原告に対し、同額の不当利得金返還請求債権を有する。

被告は、平成四年四月一三日の本件口頭弁論期日において、原告に対し、右不当利得金返還請求債権をもって、請求原因1の(一)の貸金債務と対当額で相殺する旨の意思表示をした。

(三)  被告は、昭和五五年五月七日、都城食品振出にかかる支払期日同年六月六日、金額一〇〇万円の約束手形を利息月六分の約定で割引を受ける方法により、原告から一〇〇万円を借り受け、その際利息六万二〇〇〇円を天引きされた。以後、被告は原告に対し、右貸金一〇〇万円について、別紙計算書3記載の振出日、支払期日、金額のとおりの切替えの約束手形(いずれも都城食品振出)を差し入れ、その都度、月六分の割合による利息を天引きされた。

右天引きされた利息の合計は、別紙計算書3記載のとおり一四〇万九〇〇〇円となり、利息制限法所定の制限内利息は二七万〇八二八円であるから、一一三万八一七二円が過払いとなり、被告は原告に対し、同額の不当利得金返還請求債権を有する。

被告は、平成四年四月一三日の本件口頭弁論期日において、原告に対し、右不当利得金返還請求債権をもって、請求原因3の(一)、(二)の準消費貸借金債務と対当額で相殺する旨の意思表示をした。

2  被告はこんにゃくの中間卸売りを営む商人であり、請求原因1の(二)、(三)の借入れ行為は商行為に該当するので、

(一) 請求原因1の(二)の貸金債権は、弁済期から五年を経過した昭和六二年五月一二日に、

(二) 請求原因1の(三)の貸金債権は、弁済期から五年を経過した昭和六二年五月一四日に、

それぞれ時効によって消滅した。

被告は本訴において右時効を援用する。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の(一)ないし(三)のうち、手形割引により別紙計算書1ないし3記載の振出日、支払期日、金額のとおりの手形を授受して、被告が受取額欄記載の金員を受け取ったことは認め、その余は否認する。右金員は被告が借り受けたのではなく、手形割引により原告が手形を買い受けたものであり、また、手形は各計算書の最後の各手形を除いていずれも決済されており、新たな手形割引であって、切替えではない。

2  同2は否認する。

五  再抗弁

原告は、被告が拒絶証書作成義務を免除して原告に裏書した別紙手形目録(三)記載の約束手形(以下「(三)手形」という)を所持し、これを支払期日に支払場所に呈示しており、平成四年四月一三日の本件口頭弁論期日において、右約束手形金債権を自働債権として、被告主張の不当利得金返還請求債権のうち、発生の時期の早いものから順に右約束手形金に満つるまで対当額で相殺する旨の意思表示をした。

六  再抗弁に対する認否

否認する。(三)手形は別紙計算書2記載の一〇〇万円の借入れにかかる最後の手形であり、右計算書記載のとおり既に弁済によって消滅している。

第三  証拠(省略)

理由

一  抗弁1の(一)ないし(三)のうち、原・被告間で別紙計算書1ないし3記載の振出日、支払期日、金額のとおりの手形を授受して、被告が受取額欄記載の金員を受け取ったことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第八、第九号証の各一、二、第一〇ないし第一二号証、第一三号証の一ないし六三、第一四号証、乙第九号証の一ないし四七、証人八木直の証言により真正に成立したものと認められる乙第一号証の一ないし一一、同号証の一三ないし二一、第二号証の一ないし三、同号証の五ないし一九、第三号証の一ないし二〇、証人福迫和子の証言により真正に成立したものと認められる乙第四号証の一ないし五一、第五、第六号証、第八号証、第一〇号証の一ないし五、証人八木直、同福迫和子の各証言、被告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。

1  都城食品の代表取締役である八木直(以下「八木」という)は、昭和五五年四月、貸金業者である原告に対し、営業資金の借入れを申し込んだところ、担保があれば貸付けに応ずるとのことであったが、都城食品や八木には供すべき担保を有していなかった。そこで、八木は、同月二六日、都城食品の従業員である被告を同道して原告方を訪れ、被告所有の不動産について債務者を被告、極度額を三〇〇万円とする根抵当権を設定することとし、そのための関係書類を作成するとともに、原告の指示で借主を被告として原告から借入れをすることとなり、一五〇万円及び一〇〇万円の二口にて合計二五〇万円を借り入れた。当日、八木は都城食品振出の支払期日同年五月二五日、金額一五〇万円と支払期日同月三〇日、金額一〇〇万円の約束手形二通を持参し、いずれにも被告が裏書をしてこれを原告に差し入れ、期日まで月六分で計算した利息として九万円と七万円がそれぞれ天引きされ、一四一万円及び九三万円を受領した。

2  同年五月七日、同様の方法で、被告を借主として一〇〇万円の借入れがなされ、都城食品振出の支払期日同年六月六日、金額一〇〇万円とする約束手形に被告が裏書をしてこれを原告に差し入れ、期日まで月六分で計算した利息として六万二〇〇〇円が天引きされ、被告は九三万八〇〇〇円万円を受領した。

3  原告は、右三通の約束手形をそれぞれ銀行に取立て、いずれも決済された。

4  都城食品は、右三通の約束手形が決済されると、営業資金が不足することから、それぞれその決済後に近接して支払期日をほぼ一か月後とする同額の約束手形を振り出し、これを被告が原告方に持参して裏書のうえ原告に差し入れ、同様に月六分の利息を天引きされた残額を受領し、以後、同様の方法で、別紙計算書1ないし3記載のとおり、原告からの借入れを継続した。

5  被告は原告から受領した金員をそのまま都城食品に持ち帰り、都城食品では、その都度右一五〇万円一口、二〇〇万円二口を原告からの借入金、天引きされた金員を支払利息として記帳し、別紙計算書1ないし3の各最後の約束手形(各番号〈22〉)以外はすべて決済した。

6  都城食品は昭和五七年三月末に手形不渡りを出して倒産し、任意の債権者集会が開催されたが、その際八木が作成し、各債権者に示された債権者一覧表では、都城食品の原告に対する負債は、被告を通じて借り入れた分が三五〇万円、その他に鎌田ミサの物件を担保に入れ都城食品の手形を振り出して借り入れた分が五〇〇万円と記載されている。なお、右五〇〇万円の借入れについてはその後返済された。

右認定の事実によると、被告は、都城食品が原告から営業資金を借り入れるについて、借主となることを了解していたもので、都城食品を振出人、被告を裏書人とする新たな約束手形が原告に差し入れられることによって金銭消費貸借契約がその都度個別に成立し、それらの約束手形が決済されたことによって右貸金はそれぞれ弁済されたというべきである。

この点について、原告は、別紙計算書1ないし3の約束手形はいずれも手形割引により原告が買い受けたものであり、被告に対する貸金ではない旨主張し、前掲甲第一〇、第一一号証、第一三号証の一ないし六三、原告本人尋問の結果は右主張に副うものであるが、被告本人尋問の結果によると、右各甲号証は、原告の指示で、原告が示した原稿どおり被告が記載したものにすぎないことが認められ、これをもって手形の売買とは認定できず、また、右認定したように、原告は貸金業者であること、当初八木は都城食品の営業資金を必要としたことから原告に借入れを申し込んでいること、被告を借主としたのは、担保を提供したのが被告であるため、これと符号させるためであるとみられること、原告方に手形を持参し、原告から金員を受領したのは被告であるが、被告は都城食品の従業員にすぎず、すべて都城食品に金員をそのまま渡しており、都城食品はこれを原告からの借入金として処理していること、原告に差し入れた手形はすべて都城食品の振出であり、いずれも月六分の利率で計算された金額が差し引かれていること、資金の調達を必要としたのは都城食品であり、債権者集会に提出された債権者一覧表でも、都城食品の原告に対する負債として記載されていること等の各事実からみて、金銭消費貸借というべきであり、原告の主張に副う原告本人尋問の結果は信用できない。その他、前記認定を動かすに足りる証拠はない。

そうすると、別紙計算書1ないし3の各最後の約束手形(各番号〈22〉)が原告に差し入れられた時点では、被告は原告に対し三口からなる合計三五〇万円の貸金債務を負っていたことになり、天引きされた利息は利息制限法を超過することになる。

これを別紙計算書1の最後の貸金(番号〈22〉)についてみると、一五〇万円の貸金について三二日間の利息として九万四〇〇〇円が天引きされているが、これを利息制限法による年一五パーセントの割合で計算すると制限利息は一万八四八九円となり、七万五五一一円が超過利息となるので、これを元本一五〇万円に充当すると貸金元本は一四二万四四八九円となり、遅延損害金の割合について定めがあったとの証拠はないので、右元本に対して弁済期の翌日である昭和五七年四月一六日から年一五パーセントの割合による遅延損害金が発生することになる。

ところで、別紙計算書2、3はいずれも制限利率を年一五パーセントで計算しているが、これらについての利息制限法所定の利率は年一八パーセントであるから、右各計算書の約束手形をもとに計算しなおすと、それぞれ別紙計算書4、5のとおりとなる。

そこで、別紙計算書1と同様に、最後の貸金について計算すると、別紙計算書4の最後の貸金(番号〈22〉)については、貸金元本は九五万〇三〇九円、別紙計算書5の最後の貸金(番号〈22〉)については、貸金元本は九四万七一六七円となり、それぞれ弁済期の翌日である同年四月二五日、同月二二日から年一八パーセントの割合による遅延損害金が発生することとなる。

二  そこで、請求原因1について検討する。

成立に争いのない甲第一ないし第三号証の各一、二、証人八木直、同福迫和子の各証言、被告本人尋問の結果によると、都城食品が昭和五七年三月末に手形不渡りを出して倒産したため、原告は、同年四月上旬頃八木及び被告を呼出し、市販の約束手形用紙三通に、いずれも債務者を被告、連帯保証人を都城食品、金額をそれぞれ九八万円、九九万円、九七万円と記入させた(いずれも裏面は利息・損害金とも日歩一〇銭とする誓約書となっている)こと、当時、前記のとおり原告に対して一五〇万円一口、一〇〇万円二口の約束手形が差し入れられており、それ以外に被告名義による貸金債務はなく、当日、八木は一〇万円に満たない金額を原告に支払ったものの、新たな借入れは全くしておらず、原告から被告又は都城食品に対し金銭の授受もされていないことが認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果は信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

そうすると、請求原因1の三口の貸金についてはこれを認めることはできず、仮に旧債務について準消費貸借契約が成立したとしても、当時被告が負担していた債務額と請求原因1の三口の貸金額とが合致せず、これを符合させるに足りる証拠もないため、請求原因1のとおりの三口の準消費貸借契約が成立したと認めることもできない。

三  次に、請求原因2、3について検討する。

前掲甲第八、第九号証の各一、二、成立に争いのない甲第四ないし第七号証の各一、二、証人福迫和子の証言、被告本人尋問の結果によると、被告が原告に差し入れていた(一)手形(別紙計算書1の最後の約束手形、番号〈22〉)は支払期日の昭和五七年四月一五日に呈示されたが不渡りとなり、同様に(二)手形(別紙計算書3の最後の約束手形、番号〈22〉)も同月二一日不渡りとなったこと、そこで、その頃原告は被告を原告方に呼出し、市販の約束手形用紙に、(一)手形についてはいずれも債務者を被告とし、同年四月一六日付で支払期日を同年五月一五日、金額を九五万円とする約束手形と同年四月一七日付で支払期日を同年五月一六日、金額を五五万円とする約束手形、(二)手形についてもいずれも債務者を被告とし、同年四月二二日付で支払期日を同年五月二一日、金額を六〇万円とする約束手形と同年四月二三日付で支払期日を同年五月二二日、金額を四〇万円とする約束手形(いずれも裏面は利息・損害金とも日歩一〇銭とする誓約書となっている)を作成させたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右認定の事実によると、昭和五七年四月二二日頃、原・被告間で(一)及び(二)手形による貸金債務について準消費貸借契約が成立したものというべきであるが、前述したとおり、(一)及び(二)手形による貸金債務は利息制限法による制限利息を超過しているので、右各準消費貸借契約は、(一)手形による貸金債務(別紙計算書1番号〈22〉)については元本合計一四二万四四八九円、(二)手形による貸金債務(別紙計算書5番号〈22〉)については元本合計九四万七一六七円の限度で効力を有するにすぎない。

四  すすんで抗弁1の(一)について検討する。

被告が、昭和五五年四月二六日、都城食品振出にかかる支払期日同年五月二五日、金額一五〇万円の約束手形を差し入れて原告から一五〇万円を借り受け、利息九万円を天引きされたこと、以後、被告は原告に対し、右貸金一五〇万円について、別紙計算書1記載の振出日、支払期日、金額のとおりの約束手形(いずれも都城食品振出)を差し入れ、その都度月六分の割合による利息を天引きされたこと、右計算書番号〈1〉ないし〈21〉の各手形はいずれも銀行取立てに回り、決済されたこと、以上の事実は一項で認定したとおりである。

そうすると、別紙計算書1の番号〈1〉ないし〈21〉の貸金について天引きされた利息の合計は二〇一万三〇〇〇円となり、これに対する利息制限法所定の制限内利息は三八万六〇四七円であるから、一六二万六九五三円が過払いとなり、被告は原告に対し、同額の不当利得金返還請求債権を有することとなる。

被告が平成四年四月一三日の本件口頭弁論期日において別紙計算書1による不当利得金返還請求債権をもって請求原因2の(一)、(二)の準消費貸借金債務と対当額で相殺する旨の意思表示をしたことは本件記録上明らかであり、右準消費貸借金債務は前記のとおり元本合計一四二万四四八九円の限度で効力を有するものであるから、利息を考慮しても、右相殺によって消滅したというべきである。

五  同様に、抗弁1の(三)についてみるに、被告が、昭和五五年五月七日、都城食品振出にかかる支払期日同年六月六日、金額一〇〇万円の約束手形を差し入れて原告から一〇〇万円を借り受け、利息六万二〇〇〇円を天引きされたこと、以後、被告は原告に対し、右貸金一〇〇万円について、別紙計算書3記載の振出日、支払期日、金額のとおりの約束手形(いずれも都城食品振出)を差し入れ、その都度月六分の割合による利息を天引きされたこと、右計算書番号〈1〉ないし〈21〉の各手形はいずれも銀行取立てに回り、決済されたこと、以上の事実は一項で認定したとおりである。

そうすると、別紙計算書5(別紙計算書3を計算しなおしたもの)の番号〈1〉ないし〈21〉の貸金について天引きされた利息の合計は一三四万一〇〇〇円となり、これに対する利息制限法所定の制限内利息は三〇万九八二二円であるから、一〇三万一一七八円が過払いとなり、被告は原告に対し、同額の不当利得金返還請求債権を有することとなる。

被告が平成四年四月一三日の本件口頭弁論期日において別紙計算書3による不当利得金返還請求債権をもって請求原因3の(一)、(二)の準消費貸借金債務と対当額で相殺する旨の意思表示をしたことは本件記録上明らかであり、右準消費貸借金債務は前記のとおり元本合計九四万七一六七円の限度で効力を有するものであるから、利息を考慮しても、右相殺によって消滅したというべきである。

六  原告は、再抗弁として、(三)手形の約束手形金債権による被告の不当利得金返還請求債権との相殺を主張する。

しかしながら、前記認定によって明らかなように、(三)手形は別紙計算書2の番号〈22〉の手形である。そして、被告が、昭和五五年四月二六日、都城食品振出にかかる支払期日同年五月三〇日、金額一〇〇万円の約束手形を差し入れて原告から一〇〇万円を借り受け、利息七万円を天引きされたこと、以後、被告は原告に対し、右貸金一〇〇万円について、別紙計算書2記載の振出日、支払期日、金額のとおりの約束手形(いずれも都城食品振出)を差し入れ、その都度月六分の割合による利息を天引きされたこと、右計算書番号〈1〉ないし〈21〉の各手形はいずれも銀行取立てに回り、決済されたこと、以上の事実は一項で認定したとおりである。

そうすると、別紙計算書4(別紙計算書2を計算しなおしたもの)の番号〈1〉ないし〈21〉の貸金について天引きされた利息の合計は一三七万八五〇〇円となり、これに対する利息制限法所定の制限内利息は三一万七三二七円であるから、一〇六万一一七三円が過払いとなり、被告は原告に対し、同額の不当利得金返還請求債権を有することとなる。

被告の抗弁1の(二)は、別紙計算書2による不当利得金返還請求債権をもって請求原因1の(一)の貸金債務と相殺せんとするものであるが、右抗弁は、別紙計算書2の番号〈22〉の貸金が請求原因1(一)の貸金に該当することを前提としているので、その相殺は、別紙計算書2による不当利得金返還請求債権と同計算書番号〈22〉の貸金債務との相殺を主張するものというべきであり、被告が平成四年四月一三日の本件口頭弁論期日において右相殺の意思表示をしたことは本件記録上明らかである。

そうすると、別紙計算書4(別紙計算書2を計算しなおしたもの)の番号〈22〉による貸金債務は前記のとおり元本が九五万〇三〇九円であるから、利息を考慮しても、右相殺によって消滅したというべきであり、これにより(三)手形の約束手形金債権もまた消滅したので、再抗弁は理由がない。

七  以上の次第で、原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(別紙)

手形目録

(一) (二) (三)

金額 一五〇万円 一〇〇万円 一〇〇万円

振出人 有限会社都城食品蒟蒻製造所 同上 同上

振出日 昭和五七年三月一五日 同月二〇日 同月二五日

振出地 都城市 同上 同上

支払期日 昭和五七年四月一五日 同月二一日 同月二四日

支払地 都城市 同上 同上

支払場所 株式会社宮崎相互銀行都城支店 同上 同上

受取人 被告 同上 同上

第一裏書人 被告 同上 同上

別紙計算書1

〈省略〉

別紙計算書2

〈省略〉

別紙計算書3

〈省略〉

別紙計算書4

〈省略〉

別紙計算書5

〈省略〉

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